日本の食卓に新たな文化を生み出した逸品
当社の設立は、1958(昭和33)年5月。本社・工場を神奈川県横浜市神奈川区におき、ソース・ケチャップの製造販売を開始しました。社名は、創業者が以前に事業を行っていた地名(東京都荏原区、現在の品川区)に由来しています。1960年代には「インスタントラーメンのスープ」 や、業務用「札幌ラーメンの素」を発売しました。
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ラーメンスープに次いで「焼肉のたれ」が発売されたのは、高度経済成長期を迎えた1968(昭和43)年。人々の食生活が豊かになり、これまで魚中心だった食卓に、さまざまな肉料理が登場し始めた時代です。街中では焼肉店が次々と開店し、若者たちで賑わっていました。当社の創業者である森村國夫が、そんな光景を見て「焼肉をなんとか家庭に持ち込めないものか」と思いついたことから、「焼肉のたれ」は誕生したのです。
焼肉のたれの開発にあたって、森村は東京・横浜を中心に数十件の焼肉店を試食して回ることから始めました。大衆に喜ばれる味 を求めて、高級店よりも庶民的で繁盛している店に足を運んだといいます。そして試行錯誤の末、醤油をベースに、さまざまな原材料を独自の比率で配合し、肉になじむ風味のたれが完成しました。商品名についても工夫し、他社では家庭向けに"ソース"という名称で調味料を販売してい たのに対して、醤油ベースの商品に一番ぴったりなことから"たれ"と名付けました。
「焼肉のたれ」は、精肉店の店頭で発売を開始しました。殺風景なショーケースの上に派手なデザインの商品を置くことで、お客様の目を引こうというアイデアでした。あわせて、店頭での試食販売を積極的に行ったことで次第に評判が広がり、好調に売れ行きが伸びていきました。女性の社会進出が進み、簡便なメニューとして人気を呼んだことや、家庭でも手軽に肉を焼けるホットプレートが登場したことも追い風となりました。発売翌年には、スーパーマーケットの店頭にも並び、その翌年には月の家円鏡さん(故・橘家圓蔵師匠)を起用したテレビCMを展開し、全国的に販売を拡大しました。
こうして焼肉を家庭料理として定着させるとともに、当社の礎を築いたのが「焼肉のたれ」でした。