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黄金コラム2016.7.14

第6回
家焼肉のヒントは人気焼肉店にアリ! 東京を代表する焼肉5店の秘密を徹底解析!

家族や仲間たちとワイワイ肉をつつきあうだけでも家焼肉は楽しいものだが、せっかくならワンランク上のおいしさを極めたい。となれば、肉の匠に教えを請うのが一番。そこで『東京カレンダー』が厳選した、今都内で予約困難な人気の焼肉店に取材を敢行。家焼肉をより楽しくするヒントを探りに、街に繰り出した。まず、「黄金カレンダー」編集部の浜田が向かったのは!?

かるびあ~の

赤身肉好き必見! 希少牛の赤身を、塊肉やTKGで……。


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ワイガヤとした酒場がひしめく新橋で、しっぽりとカウンター焼肉が楽しめる『かるびあ~の』。赤身専門店をうたうこちらでは、都内でも食べられる店が限られる希少な岩手産の短角牛と熊本産のあか牛を、肉問屋直営ならではのフレッシュな状態でいただける。

なかでも赤身肉を豪快に味わえるのが、看板メニュー「本日の塊焼き」だ。ドスンという音が聞こえそうなほど重量感のある塊肉が現れ、「このまま焼いちゃうんですか!?」と目を丸くする浜田。網の上で肉に焼き色をつけながら、肉の位置を少しずつズラしていく。その理由をたずねると、「炭の重なり具合で高低差をつけていて、焼く温度を調節しているんです」と店長の相崎誉博(あいざき たかひろ)さん。肉がいい感じに焼けてきたらアルミにくるんで寝かせ、中の脂が溶ける温度に持っていく。こうすることで、肉のうま味を最大限に高め、ジューシーに仕上げるのだという。

元寿司職人の相崎さんの包丁さばきが光る肉のカットは、美しいツヤと赤身の色づきが見惚れてしまうほど優雅。まずは何もつけずに肉のうま味をダイレクトに味わい、次にマスタードや黄身醤油で味の変化を楽しむ。そして極めつけは、この肉を大胆にごはんに乗っけたTKG! お椀からはみ出んばかりの肉と卵とだし醤油を混ぜ合わせて、一気に口へとかき込む。肉とごはんの組み合わせが、人気店の手にかかると贅沢なご馳走メニューに昇華する。

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人気の「赤身肉三種盛り(2人前¥3,200)」は短角牛2種とあか牛1種を味わえる。写真は短角牛のトモサンカクとシンシン、あか牛のミスジ。仕入れ状況によって提供する部位は異なる

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塊肉は丁寧に焼き上げられる。焼きすぎていないため肉汁が閉じ込められ、ジューシーな食感が楽しめる。こちらは粒マスタードや柚子胡椒などとの相性が抜群

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看板メニュー「本日の塊焼き」は、「あか牛かた肉160g(¥2,800)」と「短角牛もも肉160g(¥2,600)」から選べる。短角牛は脂分が控えめで肉本来の味わいを楽しめ、あか牛は程よいサシと濃いうま味が特徴的

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塊焼きの肉を少し残し、〆に「スペシャル玉子かけごはん(¥500)」を頼むのが常連客の定番。ごはんには隠し味で塩、ごま油、だし醤油を。「チャンジャ(¥100)」のトッピングも人気

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テーブル席もあるが、ここではぜひカウンター席で焼肉を楽しんでもらいたい。目の前で肉が焼かれるライブ感が、さらにおいしさに輪をかける

東京都港区新橋 3-7-4
03-3519-2929
17:00~LO26:30
日祝休
15席
※価格はすべて税込となります

炭火焼肉なかはら

焼肉職人が魅せる、最高においしい和牛の食べ方


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店の名物「幻のタン(¥2,592)」はタンゲタ、タン元、タン先を盛り合わせで。肉厚のタン元は歯切れのよさとうま味が悶絶級のおいしさ。要予約の限定品

都内に数ある焼肉店のなかで、肉好きならば一度は訪れるべきお店が、ここ『炭火焼肉なかはら』だ。『東京カレンダー』の2015年レストラン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた、東京中の肉loverをとりこにする焼肉の名店中の名店である。「三ノ輪に焼肉の名店あり」とうたわれた伝説の焼肉屋『七厘』が、場所と名を変え市ヶ谷で2014年11月にリニューアル。以来、数カ月先まで予約が取れない状況が続いている。

そこまで人を魅了する焼肉とは、どんな焼肉なのだろうか。扱う肉は、飼育日数30カ月以上のA5ランクの処女牛のみ。店主好みの牛を一頭買いし、それを店主の中原健太郎(なかはら けんたろう)さんが自ら解体していく。それは中原さんにとって特別なことではなく、「自分が扱う食材を極めるため」には当り前のことだという。「寿司は2万円まで許されるのに焼肉はなぜ同等にならないのか。和牛は世界に誇れるハイクオリティな食材なのに、扱う人がそれを知らないから焼肉屋の評価も上がらない。僕は和牛の持つポテンシャルを正しくお客様に伝えて、焼肉業界全体のレベルを底上げしたい」と中原さんは語る。

職人気質な焼肉への情熱は、部位ごとのカッティングにも表れている。肉はすべて生肉の状態で手切りをし、1ミリ単位で厚さを調整。噛んだときの歯切れや、口に含んだときの食感と香りがベストな状態になるように計算している。職人の技と心に舌を巻く“味わう焼肉”。肉好きなら食べずにはいられない。

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「おまかせコース(¥9,180~¥11,340)」の最初に出されるサーロイン。余計な脂を削り芯の部分だけを使用。とろけるような舌触りと上品な脂の甘みが広がる

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元寿司職人のスタッフが握る、「和牛の握り・巻物(¥1,944)」(1人前※注文は2人前~)。肉はリブ芯を使用し、シャリはしょうがの炊き込みごはんを合わせている

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ビルの最上階にある開放的な店内。スタッフの接客も素晴らしく、気持ちよく焼肉のおいしさに浸れる。平日の17~19時は比較的予約が取りやすいとのこと

東京都千代田区六番町4-3 GEMS市ヶ谷9F
03-6261-2987
17:00~LO22:30
水休
44席
※価格はすべて税込となります

Cossott’e SP

黒毛和牛のA5雌牛を存分に味わえる隠れ家


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「おまかせ肉盛り合わせ(¥3,350※写真は2人前)」。その日のおすすめ部位をシェフが4種セレクトしてくれる。この日は、上タン塩、ハネ、ハラミ、ランプ

扱う肉は、「厳選黒毛和牛」「雌牛」「A5」。お店のテーマである「おいしい肉を口いっぱいに」を体験するなら、アラカルトよりもその日のおすすめをシェフが組み立ててくれるお任せコースがおすすめ。

タン、赤身肉、サーロインなど、定番部位に希少部位も盛り込みながら、塩ダレ、ポン酢、醤油だれなど、部位ごとに味付けを変えて提供される。そのスタイルは、奇をてらった創作料理とは一線を画し、例えるなら江戸前寿司のような仕事ぶり。肉質のよさに甘えることなく、部位ごとにその肉のおいしさが最も引き立つ食べ方を提案してくれるのが『Cossott’e SP』の魅力といえるだろう。

店自慢の肉を堪能できるのが、「おまかせ肉盛り合わせ」だ。うま味と甘味が最上級の上タン塩は、シンプルにレモン汁で。ジューシーなハネは、塊のまま焼いてにんにく醤油で。特徴的な食感のハラミと、やわらかくさっぱりとしたうま味のランプはワサビでと……。自家製の付けだれは、うま味と甘味が強い和牛に調和するようにキレのある醤油だれに仕立てており、それぞれが個性的なのに最後まで飽きさせない。

〆のメニューはかすうどん、カレー、櫃まぶしなど充実し、どれも上質な肉を使ったスペシャルな味わいで手抜きなし。肉を純粋に楽しめつつも、新鮮な驚きを与えてくれる貴重かつ希少な一軒だ。

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特上雌和牛のサーロインの焼しゃぶ(¥3,030※写真は1人前)」。キメ細かくサシの入ったサーロインをさっと炙って、ポン酢だれであっさりといただく。脂が苦手な人にも評判の一品

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「ネギとタンの櫃まぶし(¥2,050)」。2日間トロトロに煮込んだタン下とたれを一緒にごはんに乗せて、まずはそのままひと口。次にスジ肉でだしをとったスープをかけてさっぱりと

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麻布十番の喧騒から少し離れた場所で静かに焼肉を楽しむ。ゆったりとした広めのボックスシートは時間の流れを忘れさせてくれる

東京都港区六本木 5-13-11 スペーシア麻布十番I-2F
03-6441-2646
18:00~LO24:00
日休
30席
※価格はすべて税込となります

焼肉ホルモン 青一

とびきりうまい「焼肉×ごはん」を食べるならココ!


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ミスジは肩甲骨の内側にあり、1頭から1.8㎏しか取れない希少部位。美しいサシまわりで、大トロのような脂ノリと口溶けがたまらなく美味

肉の仕入れは銘柄、産地にはこだわらず、その日市場に入ったものから品質と価格のバランスが取れた国産和牛A5ランクを仕入れている。

メニューを開くと、赤身、霜降り、特上などにカテゴリー分けされ、細かな部位までたくさんそろえているのが特徴。「焼肉といったらカルビやロース。でも、おいしい部位はもっとたくさんあるし、自分の好きな部位を見つけてほしいんです」と、店長の荒孝一郎(あら こういちろう)さん。この立地と肉の品質にして、価格はリーズナブルな印象。塊で仕入れて店で細かく解体しているため、種類を豊富にそろえることができ、さらに他店と同クオリティの希少部位も価格を抑えることができるのだとか。

そして、肉も米も大好きな人に朗報なのが、この店はとにかく“米推し”の焼肉店だということ。米は丹波篠山産の「ミルキークイーン」を使用。モチッとした食感と粒立ちが特徴の米を、注文を受けてから土鍋で丁寧に炊き上げ、食感と粒立ちを際立たせている。さらに、焼肉だれも「ごはんに合う」ことを前提に調合。たれは濃口醤油をベースに、2種のフルーツと隠し味にオレンジマーマレードを足してフルーティーに仕上げている。たれと霜降り肉との相性が抜群で、ごはんが進むこと間違いなし。酒のつまみで食べる焼肉もいいが、やっぱり焼肉には白いごはんが最強のパートナーだということを再認識できる。

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「和牛5種盛り(¥3,240)」。その日仕入れたおいしい部位を贅沢に5種類味わえる(部位は日によって異なる)。好みでたれ、塩を選べる

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焼き立ての肉をほかほかの白いごはんに乗せる! ごはんを食べるための焼肉とたれで味わうオンザライスは格別のおいしさ。「土鍋ごはん(2合)(¥1,296)」

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青山一丁目駅からすぐといった好立地にあり、仕事帰りやデートにも最適。お酒が苦手な人でも楽しめるメニュー展開で、使い勝手がよいのもうれしい

東京都港区南青山1-3-6
03-6455-4129
17:00~LO22:40
日休
30席
※価格はすべて税込となります

加藤牛肉店

業界屈指の「肉の目利き」が手掛ける山形牛ステーキ


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ディナーは「おまかせコース(¥19,500~)」のみ。見よ! この美しすぎるきめ細かなサシの入り。コース内のステーキは、サーロイン、シャトーブリアン、ランプの3種を贅沢にいただける

第2回「実践編! 肉マイスター田辺晋太郎に聞いた家焼肉が最高に楽しくなる4つの方法」では、田辺氏から「塊肉のススメ」なるお話も。そこで、塊肉といえばステーキ! ということで、ステーキの名店にも話を伺った。

訪れたのは銀座にある『加藤牛肉店』。店主は、横浜で1930年から続く老舗精肉店の3代目。肉の目利きは業界でも一目置かれるほどで、その店主が惚れ込む山形牛の処女牛が味わえる。扱う牛は、信頼のおける生産者によって山側で育てられた、生後32カ月以上のものを厳選して仕入れるこだわりぶりだ。この条件がそろう牛は通常、県外では手に入らないという。

肉のサシの美しさに見とれていると、シェフの景山豊作(かげやま とよさく)さんが教えてくれた。「ステーキを焼くときは220~240℃くらいに鉄板を熱して色をつけていきます。肉が面していた部分は鉄板の温度が下がっているから、違う位置で裏側を焼くこと。焼き立ては肉の温度が上がっていて肉汁が逃げてしまうので、少し寝かせるのも鉄則。厚みのある肉は、少し時間を置くことでぐっとうまみを引き出せます」。なるほど、これは家焼肉でも応用できそうだ。

山形牛のステーキは、赤身は甘く、脂はキメ細かくサラリとした味わいで上品。コースでハンバーグ、コンビーフなどひと通り味わったら、最後は「山形牛ステーキごはん」で〆る! 数多くの肉好きを唸らせる、極上肉のフルコースで贅沢に酔いしれよう。

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カウンター席では、目の前の鉄板で焼かれる音と香りも楽しめる。溢れるほどの脂が肉質のよさを物語っている

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コースの前菜で登場するコンビーフは、山形牛を手作業で丁寧にほぐしてから成形する人気の一品。脂のうま味とスープが染みたバゲットがこれまた美味!

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コースにステーキごはんは含まれないが、追加でのオーダーが多い。写真はランプの「ステーキごはん(¥5,700~)」。価格は肉の部位やボリュームによって変わる

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カウンター席とテーブル席3つのみの、プライベート感漂う落ち着いた店内。シェフとの会話や手さばきを眺められるカウンター席がおすすめ

東京都中央区銀座 6-4-15 トニービル 1F
03-5537-2220
18:00~LO23:00
日休
15席
※価格はすべて税込となります

■「黄金カレンダー」編集部 浜田コメント

「ということで、東京でも屈指の人気焼肉店5店を取材してみましたが、一口に焼肉店といってもお店によって個性が大きく違うことを実感しました!肉へのこだわりは言わずもがなですが、注目すべきは肉とごはんを使ったメニューの人気ぶり! 外焼肉では、肉+ごはんがかなり注目を浴びていると仮定できるのではないでしょうか! 以上、東京の現場からでした!」

Photos/sono@bean, Ryoma Yagi, Kazuhiro Fukumoto@maetico, Text/Sakai Ayano@verb